剣の達人

May 17, 2005

宮本武蔵の教え 【剣術は、世の中の役に立つの?】

空手や拳法、柔道、剣道、合気道など。
それらの「技術」は、実生活で使うことはあまりありません。 空手を習っている人が、いきなり街中で人を殴ったりはできないですよね。突きや蹴りの技術は、それ自体、道場の中か、試合でしか使うことしかできないものなんです。

 じゃあ、めちゃくちゃしんどい目をして、どうしてそんな技術を習得しようとするの?
そのジレンマに悩まされた一人の剣豪がいます。
彼の名は、宮本武蔵。
戦国時代後半から江戸時代前半にかけて活躍した、不世出の剣豪。生涯60数度の戦いをすべて勝ち抜き、剣一筋に生きた人です。

その強さは、今となっては知る由もありませんが、とにかく「めっちゃ強かった」んでしょう(笑)。
その武蔵の生きた時代。特に晩年。 江戸時代前半になると、争乱の種も消え、天下泰平の空気が世の中に流れ出すと、人を殺傷するための「剣技」は、無用の長物だという風潮がただよっていました。

 彼の晩年は、決して恵まれたものではなかったようですが、晩年には、今も読み継がれている、あの有名な『五輪書』を書き下ろしています。 その『五輪書-地之巻』の中に、次のようなことが書かれています。


世の中に、兵法の道をならひても、 実の時の役にはたつまじとおもふ心あるべし。 其儀においては、何時にても、役にたつやうに稽古し、 万事に至り、役にたつやうにおしゆる事、 是兵法の実の道也。


意味は、

世のなかにおいて兵法などを習い鍛えあげようとも、実際の世事に役に立たないと思うかもしれない。
しかし、そうではない。 何時においても役に立つように稽古をして、何事においても役に立つように教えることこそ、兵法の本当の意味なのだ

ということです。 武道の技術、それ自体は実生活で使うことは少なくても、武道によって鍛えられた体の使い方、呼吸の仕方、力の強弱、バランス、胆力、集中力、持続力などは、実生活に十分に役立ちます。

そして、武道の教えもね(笑)。
人生のどんな場面においても役に立つように備えておく。これが武道を習う本当の意義なのでしょうかね。 いつ、いかなる時でも平常心を忘れないことも、武道の意義だと思います。 どんな事をするにしても、メンタル面は非常に重要です。技術というスキルだけを身につけても、メンタル面を充実させないとね。

 ■参考文献 新釈「五輪書」―宮本武蔵の哲学を読む
長尾 剛
456957761X



mmmmy60137 at 05:09|この記事のURLComments(1)TrackBack(1)